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そして、中学二年生になった頃。フレアの特効薬が完成した、と報道があった。
入院していた人たちには直ちに特効薬が投与され、封じ込めは「成功」していった。
最初はみんな怖がって防護マスクを脱ぐことは無かったが、次第に街の人達もマスクを外すようになった。
しかし、ここで問題が起こった。
「マスクが外せない子どもたち」だ。
僕らや、僕らよりも下の子供たちは、あまりにもマスクを付けた生活が長すぎた。マスクを付けることが「普通」になってしまったのだ。
僕も最初はマスクを外す事に抵抗があった。
素顔を見せるのが「怖い」。
幸い、僕自身はみんながマスクを外して登校する流れに乗って、ある日外して登校することが出来た。数年ぶりに見る友達の顔は大人になっていて、自分の顔もそんなふうに見られているのだと思うとなんだか気恥ずかしかった。
そんな中、最後までマスクを外そうとしなかったのが、あの花森だった。
全校集会などで全員が集まる機会がある中、一人だけスッポリと顔をおおったままの花森は目立つ。
ほんの数ヶ月前までみんなが被っていた防護マスクだったのに何故かその姿は異質に見えた。
(なんでマスクを外さないんだろう…)
僕は、あの日保健室で見た花森の寝顔しか知らない。
転校生なら他にもいるのに、どうしてこんなにも、花森だけが気になるのかが分からなかった。
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