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「警察で落としてきた可能性はないんですか?」
「あんなとこに謎の手首が落っこちてたら、うちよか騒ぎになんだろ」
「ストレッチャーを車に載せる前、奥さんが故人の手を握ってたんです……だからやっぱり、会社に着いてから失くなったんだと……」
「なるほど……」
搬送時の揺れが不完全な縫合にとどめを刺したことは考えられる。
だとしたら寝台車や駐車場に落ちている可能性のほうが高そうだが、おそらくそちらも探しに探してなお見つからないからこそ晴澄が駆りだされたのだろう。
「あ……ち、ちなみに……」
ひとまず指示に従おうと晴澄が床を軋ませると、平坂の震えが一段と大きくなった。
「この会社、そっ……、そういうのない、ですよね?」
「ん、なに。どういうの?」
「ええっと……バラバラ殺人で亡くなった人の霊が、他人の体の一部を集めてる……みたいな……?」
上半身を中途半端にねじった姿勢で、飛鳥と顔を見合わせる。いわゆる怪談、オカルトの類か。
「ないわ」
「ありません」
「……ですか」
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