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「あと2、3年すりゃ平坂くんも鼻で笑っちまうと思うぜ? 非現実的な現象なんて、そうそうお目にかかれるもんじゃねえのよ」
晴澄も同意しようとしたが──
不意にあの悪魔的な笑みが脳裏をよぎり、言葉に詰まった。
葬儀屋の息子に生まれて30年近く。
毎日遺体と対面しながら悪寒ひとつ覚えたことのなかった自分が、ああいう超自然そのものの男と同居しているのだから、まったく人生とは不可解極まりない。
──それに疲れ果て命を絶った者が亡骸まで粗雑に扱われることを、余人は悲劇と謳い、取り沙汰するのだろう。
これ以上日常に波風が立つのは御免だ。
駐車場に戻ってみるという飛鳥たちと別れ、晴澄は物言わぬ客が待つ安置室に向かった。
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