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これも平坂の腕の賜物である。
とりわけ死化粧に関しては、叩き上げの飛鳥や晴澄より専門学校で優秀な成績を収めた彼のほうが頼りになるのだ。本人がいくら差し出したがろうと、その手首を犠牲にするわけにはいかない。
元よりこの文明社会でそんな解決方法は取れないのだが──と布団を元に戻す直前、太腿に沿って指先を揃えている遺体の右腕に意識を吸い寄せられた。
平坂のように、故人も唯一無二の技術を持っていたとしたら。
その手には格別な意味が宿ることにならないだろうか。
がっしりとした大きな手だった。上背がある晴澄の手とさほど変わらなさそうだ。
しかし使いこんで傷だらけのこちらとは違い、その肌はきめ細やかで、ささくれひとつない。長い指からは神経質で繊細な印象を受けた。
釈迦も荼毘に付されたのち、遺骨の分配を巡って争いが起きたという。
人々に尊ばれた者であればあるほど、たとえ法に反してでもその体の一部を手に入れようとする動きは生じうるだろう。
「……盗まれた、とか……?」
「お疲れさん。どうだ、あったか?」
遺体を見つめたまま独りごちているところに飛鳥が現れた。
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