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晴澄が諦めの溜息をつくと、ヴェスナはもっともらしい態度で飛鳥に問いを投げた。
「それで? 今夜はどんな壁にぶち当たっている?」
「あ、平坂くんに聞かなかった? いやな、恥ずかしい話なんだが実は……」
聞かずともわかっているくせに、という晴澄の胡乱な眼差しを歯牙にもかけず詳しい説明を受け、彼は底意地の悪い微笑を唇の端に浮かべる。
「いくら手を尽くしても見つからん失せ物、か。しかしこの建物もそう広くはない。そろそろほかの可能性に目を向ける頃合なのではないか?」
「うちを探しても無駄ってこと? だからってさすがに警察にゃ……」
「……盗まれたんじゃないかと、考えていたんです。故人の手に何か──特別な意味があって」
「ええ?」
飛鳥が瞠目して片膝を立てる。
視線の先には乱れた布団と、哀愁漂う隻腕の遺体。
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