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ふたり揃って見えざる左手に目を遣る。
救済者とはまた仰々しい。
しかし故・鈴富氏は、そう呼ばれるほどの偉業を成し遂げた人物だということだ。
だとしても、わからないことがひとつあった。
「左弾きってなに? ピアノって両手で弾くもんじゃねえの?」
「……左手だけで技術を競うコンクールとかがあるのでは……?」
「あるかねえ……」
顎に指を添え一頻り唸ってから、飛鳥はまあいいかと膝を打つ。
「晴澄の言ったとおりだわ。故人の左手には大変重要な意味がある。つまり――」
固く握りしめられた拳。
その瞳は近年稀に見る真剣さを湛えていた。
「見つけねえと洒落にならんレベルでやばい」
「はい」
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