1話 手首はどこへ消えた?

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 ◆ ◆ ◆ 「晴澄さん大変なんです正面玄関が開け放たれてて……ってうげええ、ヴェスナさん!? どうやってここへ!?」  夫人を車で送らせるべく平坂に電話をかければ、向こうもこちらに用事があったらしく、居場所を伝えた瞬間に控え室へ駆けこんできた。 「……その正面玄関から入ってきたみたいです。戸締まりには気をつけてくださいね、平坂さん」  などと注意しておいて悪いが、これについてはどうしようもないのが現実だった。  この男は超常現象だ。どれほど厳重に閉ざされた扉も彼を前にすれば開いてしまうというのに、打てる対策があるなら教えてほしい。 「固まっている場合か、ヒラサカ。おれはおまえの左手の救済者だぞ? 心ゆくまで手厚く遇するがいい」 「ひい……相変わらず何言ってるかわかんないこの人……」 「おとなしくしてろヴェスナ。平坂さん、お願いしたいことが──」
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