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事情を説明しているうちに平坂も夫人の存在に気付いたようだ。互いにペコペコ頭を下げあうのを適当なところで制し、駐車場まで見送りにいって、事務所へ戻ると時刻は午前2時。
冴えきった頭は鈴富家葬儀の要件をまとめだし、帰宅して眠りに就くという選択肢は魅力を失いはじめていた。
予定どおり休んでしまえばかえって気が休まらなさそうである。
「んん……冷えるな。早く帰らねば部屋に霜が降りかねん」
あえてなのだろうか。
わざとらしく伸びをするヴェスナの呟きが、晴澄の思考を乱しにかかった。
「……うちに何をした?」
「何もしていない」
「施錠は?」
「していない」
「……扉くらいは閉めただろうな」
「だから何もしていないと。別に盗難に遭って困るようなものもなかろう?」
「ふざけるなこの──」
「晴澄、奥さん帰った?」
処置を終えたらしい飛鳥の登場に口を噤む。
子どもじみた口論は彼を面白がらせるだけだし、彼は基本的にヴェスナの肩を持つので、間に入られては勝ち目がないのだ。
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