1話 手首はどこへ消えた?

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「うん、みんなが帰った2時間後くらいに呼ばれてな。それはいいんだ。ご葬家(そうけ)の希望で、ご遺体はうちの安置室に運びこんだ。それもいい。お疲れの様子だったから打ち合わせは明日に改める。問題なし。  で、僕が事務処理してる間に処置を担当してくれた平坂(ひらさか)くんが……」  飛鳥の視線の先では、先程ホラー映画のように絶叫してみせた若手社員の平坂が、やはりホラー映画のように床に這いつくばっている。 「……気付いたんです。大事なものが失くなってることに」 「はあ。平坂さんのですか?」 「こっ、こ……故人の、……です……」  小刻みに震えている平坂に、晴澄は首を傾ぐ。  基本的に葬儀社が故人の私物を保管することはないのだが、外し忘れのアクセサリーか何かだろうか。もしくは枕飾りに置く好物でも預かったのか。 「搬送中に落としちまっただけで、社内にはあると思うんだが……ご葬家は朝イチで来る予定だし、今のうちに見つけださねえとまずいのよ」 「ああ……失せ物探しの人手がほしかったわけですね」
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