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「うん、みんなが帰った2時間後くらいに呼ばれてな。それはいいんだ。ご葬家の希望で、ご遺体はうちの安置室に運びこんだ。それもいい。お疲れの様子だったから打ち合わせは明日に改める。問題なし。
で、僕が事務処理してる間に処置を担当してくれた平坂くんが……」
飛鳥の視線の先では、先程ホラー映画のように絶叫してみせた若手社員の平坂が、やはりホラー映画のように床に這いつくばっている。
「……気付いたんです。大事なものが失くなってることに」
「はあ。平坂さんのですか?」
「こっ、こ……故人の、……です……」
小刻みに震えている平坂に、晴澄は首を傾ぐ。
基本的に葬儀社が故人の私物を保管することはないのだが、外し忘れのアクセサリーか何かだろうか。もしくは枕飾りに置く好物でも預かったのか。
「搬送中に落としちまっただけで、社内にはあると思うんだが……ご葬家は朝イチで来る予定だし、今のうちに見つけださねえとまずいのよ」
「ああ……失せ物探しの人手がほしかったわけですね」
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