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「ううう……ずびばぜんんん! オレがっ、オレの目が節穴なばっかりに……!」
「……搬送は飛鳥さんも一緒だったのでは」
「うん。どっちかってえと上司の僕の責任なので、聞き入れてくれないのにも参ってます」
通夜の最中であっても明朗さを絶やさぬ飛鳥の目が、よく見れば泥のように濁っている。
とはいえ死者の所有物は換えがきくものではない。それを失くしてしまったとなると、確かに社の信用問題だ。
ここに来て日の浅い平坂が自慢のオールバックを振り乱し、鼻をすすりながらバックヤードの床を這い回っているのも道理である。
「ってなわけだから、安置室見てきてくれるか? 僕が1回引っ繰りかえしたあとだが……」
「オ、オレも……3回は布団敷きなおしましたけど……」
「いいのいいの、見つかるまでは何回でもやるの。頼むわ、晴澄」
「そんなに小さいものなんですか?」
探すのは構わないが、肝心の遺失物の詳細をまだ聞かされていなかった。
めげずに5回目の捜査を入れようとするくらいだ、かなり視認しづらいものなのだろう。だとするとピアスや数珠の玉──
「大きさは……20センチくらいかな」
──ではないようだ。
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