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「足元に気をつけて……絶対に、絶対に踏んづけないでくださいね……!」
「あとこれ、手袋と布巾。見つけても素手でプラプラ持ち運ぶわけにゃいかねえしな」
「消毒液もふすまの奥にありますからっ!」
「……消毒液?」
嫌な予感が直視したくない現実を象りはじめる。
甘かった。
あの男のアンテナに引っかかった以上、失せ物というのが尋常な品であるはずがなかったのだ。
葬儀社が故人の私物を保管することはない。
錠野葬祭が責任を負うのは、彼らが遺していった冷たい体のみである。
「すみません。故人の何を、失くしたんですか」
「──手首」
頭痛がした。
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