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気は進まないが、ユイを助けてやらなければとノロノロと二人の元へ向かう。アオ様は俺に気がついても表情は特に変わらなかった。無表情でもやっぱり美人だなと思いながら、用件を聞き出そうと口を開いた。
「えっと、何の用で……」
「一緒に帰ろうかと思って」
「なんで、」
「付き合ってるから」
「そうなの!?」
まさかの言い分に驚きを隠せないでいると、アオ様は眉を顰めた。なんだ、こいつとでも言いたそうな顔だ。それはこっちの台詞だ。問題の昼休み、俺はうんともすんとも言わなかったはずだが、アオ様の中では了承したということになっているらしかった。何故だ。暗黙の了解とでも思われたのか。そんな馬鹿な。
「今、付き合ってるとか言ってなかった?」
「アオ様が? 朝比奈と?」
「なんで朝比奈? よりにもよって」
「いや、ないない。だって、朝比奈だぜ?」
途端に教室内がザワザワし始めた。事の成り行きを遠巻きに見ていたクラスメイト達が好き勝手なことを言い出している。なんとなく聞き捨てならないが、今はそれどころではない。
「だって朝比奈、遥香さん好きじゃん」
そうなのだ。というか、今日は遥香さんに会える日だから早く帰りたかったのに。一刻も早く。数秒でも早く。だからこそ、サッとアオ様がいる隣の隣のクラスまで足を運んで、パッとアオ様を呼び出して、サクッと振ってお終いにしたかったのに。なんだ、この状況。アオ様を見ると、好奇の目に晒されているにも関わらず、全く動じることなく堂々とそこに立っていた。
「ーー煩い」
メンタル強いのな、羨ましいと思うのも束の間、アオ様はピシャリと言い放った。しまいには「外野は黙ってろ」と睨みを利かせている。これはメンタルが強いどころの話ではない。
「朝比奈、行こ」
シーンと静まり返った教室の空気に、美人が凄むと迫力があるなと半ば現実逃避的に考えていると、アオ様に手を引かれた。呆然としながらも振り返ると、ユイとマミは一瞬考える素振りを見せた後、二人揃って右手の親指を立てた。いや、そうじゃなくて。助けろよ。
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