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「あのね、文化祭の後に三年生が引退するでしょ」
「うん、知ってるけど」
「それで、マミちゃんに次の部長やってほしくて。お願いに来たの」
「……え、私?」
寝耳に水ってこのことを言うんだろうなと思った。冗談の類いかと疑い、坂口さんをジッと見つめる。でも、坂口さんは笑顔一つなく真剣な面持ちだ。
「なんで私……あんまり部活も行ってないのに」
「一番実力がある人が良いんじゃないかって話になって……一年生もマミちゃんに憧れてる子多いから部長になったら、もっと部活に来てくれるかもって期待もあるみたい」
「……松田部長とか先生は何て言ってるの?」
「私達がよく考えて選んだなら言うことないって」
「…………」
私がいない間に、そんな話になっているなんて思わなかった。というか、最近は締切のこともあって部活に顔を出す頻度は高くなっていたのに。完全に初耳だ。無言の私を怒っていると受け止めたのかもしれない。坂口さんは「押しつけようとしてるわけじゃないよ!」と慌てている。
「だから、マミちゃんが部長になってくれたら、副部長は私がやるよ。部内の連絡とか細かいことは私がやるから」
「……じゃあ、私は何をすれば良いの?」
「目立つこと引き受けてくれると助かるの。部長会議とか報告会とかあるでしょ。もっと先だと新入生に向けての部活紹介とか。私、前に出るのはどうしても苦手で」
私だって別に得意じゃないのに。そもそも面倒だ。なんとか断る方向に持っていけないかと画策していると、それまで静観していたヒナが口を挟んできた。
「マミが部長やるなら、会議一緒に出れるな」
「会議……って、え、」
「俺、次の部長引き受けたから。演劇部の部長は裏方から出すことになってるんだよ」
「演技力関係なし」とわざわざ付け加えてきたのは、さっきの棒読み云々の話を引きずっているからかもしれない。「知ってる奴いる方が安心だわ」とヒナは言うけど、たとえ知らない人間の輪の中に入ったとしてもヒナなら上手くやれるはずだ。
「……ヒナも部長なら少しはマシだけどさ」
いっそ「マミが部長ってガラじゃねーだろ!」くらい言って笑い飛ばしてくれれば良かったのに。そんなつもりはないのだろうけど、結果的に坂口さんを援護射撃している。
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