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私とヒナは友達だけど、全面から肯定するのはどこか気恥ずかしい。渋い顔をしてしまったのはそのためだ。
ヒナも同じ気持ちなのかもしれない。何故かこのタイミングで教室の隅、私達の席からは目と鼻の先にあるゴミ箱に紙パックを捨てに行っている。
「……私も、茉莉花ちゃんや優奈とそういう風になれたら良かったのにって思って」
ポツリと呟かれた言葉は、ゴミを捨てて戻ってきたヒナにもしっかり聞こえていたみたいだ。
「茉莉花ちゃんって、」
「……友達なんだって」
そう言うと、ヒナの顔色が変わった。完全に口元が引き攣っている。私やユイほど小泉さんと関わっていないはずなのに、ヒナは小泉さんを苦手に思っているみたいだ。
「でも、今は全然だよ。マミちゃんにも言ったけど、友達だと思ってたの私だけだったみたいだし」
「そうなのか?」
「うん」
ヒナの本音は多分だけど、坂口さんと小泉さんが友達じゃなくてホッとした、だ。でも、坂口さんのことを思えば、露骨に表情に出すわけにはいかない。だからなのか、ヒナにしては「へえ……」と珍しく反応が薄かった。でも私は、坂口さんと小泉さんのことよりも、ヒナがなんで小泉さんに苦手意識を持っているかよりも、気になったことがある。
「……まだ、上野さんとは話せてないの?」
訊けば、坂口さんは気まずそうに目を伏せた。また自分を守るみたいに、右手で反対側の二の腕のあたりを押さえている。
「……部長決める時に久しぶりに話した。それで、優奈に言われた。どの面下げてマミちゃんに頼みに行くのって。図々しいにも程があるって」
「それって……」
「優奈、私がしたこと気づいてたの」
「何かあったのか?」とヒナが訊いてきたけど「なんでもないよ」と取り合わなかった。
「それ、前も言ったけど、気にしてないよ。もう終わった話だし、ヒナにも、誰にも言ってないし。だから、そのせいで二人が拗れてるとかならすごく嫌なんだけど……」
坂口さんは「そうじゃないよ」と首を横に振った。
「私が悪いの。それ以外には何もないよ。……修学旅行までにはなんとかなったら良いって思ってたけど……あそこ、行きたいねとかあれ食べたいねとか色々話してたから。……でも、もう無理なんだなって優奈の顔見て、思った」
きっと、酷く冷たい目を向けられたのではないだろうか。そして、もう友達には戻れないことを悟ったのではないだろうか。何よりも気になったのはーー。
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