(6)文化祭一日目

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「ピンクの髪、綺麗で好きだったのに戻しちゃったの?」 「でも、懐かしいね。マミちゃんに会った頃、思い出すよ」  残念そうな顔をしている真咲ちゃんと、懐かしそうに目を細めている光稀ちゃんを見て、二人に初めて会った時のことを思い出した。中学校の校舎内だった。私はそこで初めてユイに双子の妹がいることを知ったけど、真咲ちゃん達は「ちー姉から話聞いてたから会ってみたかったの」と笑顔を向けてくれた。確かあれは五月の……と、そうじゃない。記憶を辿っている場合じゃなかった。 「……アオ様。ユイの妹、双子なの。真咲ちゃんと光稀ちゃん。……で、私の友達のアオ様」  お互いを気にしている様子のアオ様と真咲ちゃん達に、それぞれを紹介する。アオ様は愛想のかけらもなかったけど、真咲ちゃん達に頭を下げてくれた。「めっちゃ美人……」とヒソヒソと話していた真咲ちゃん達も、慌てて会釈を返している。 「二人で来たの?」 「うん。遊びに来たのもあるけど、私達、ここ受験することにしたの。だから、文化祭も見ておきたくて」 「そうなの? もっと近いとこ行くのかと思ってた」  わざわざ通学に一時間ちょっとかけなくても、徒歩圏内にも高校はいくつかある。実際、南二中の生徒はその"いくつか"に進学することがほとんどだ。だからこそ、私はここを選んだのだけれども。 「だって、ここ入ったらマミちゃんいるでしょ?」 「先輩にマミちゃんいるの嬉しいもん」 「真咲ちゃん……光稀ちゃん……」  感動を覚えたのも束の間、二人は「制服も可愛いし!」と声を揃えている。 「今のが本音でしょ?」 「やばい、バレた」  ムッとした振りをしてみせれば、二人は悪戯っ子みたいな顔で笑った。 「……あ。そうだ、マミちゃん、イケメンの友達いる?」 「え、…………ヒナ、かな」  そもそも友達がいないというのもあるけれど、真咲ちゃんに尋ねられ、思い浮かんだのはヒナだけだった。 「ちー姉が、涼次にあんなイケメンの友達いると思わなかったーってビックリしてたから」 「ていうか、ヒナって、あのヒナ? 全然イケメンのイメージじゃなかったけど」  ヒナのことは何度か真咲ちゃん達に話したことがある。主に、十個上の女の人に恋焦がれている様子のおかしい友人がいるという話だ。そのせいで真咲ちゃん達の中で、勝手なヒナ像が出来上がっていたみたいだ。 「別に造形は重要じゃないからね。でも、ヒナは色々忙しいからなー。多分、会えないかも。あ、でも演劇部の公演見ていったら? ヒナは出ないけど演劇部だし。一応、次の部長らしいし?」 「二時からだよね?」とアオ様に訊くと「そうね」とアオ様は頷いた。
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