(6)文化祭一日目

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「……由井とは似てないのね」  真咲ちゃんと光稀ちゃんがお化け屋敷の行列に並びに行った後、アオ様が呟いた。 「お姉さん見たヒナも同じこと言ってたよ。姉妹は結構似てるんだけどね」 「お姉さん……」 「うん。上にお姉さん二人、下に妹二人でユイが真ん中」  さっきのチョコバナナ、どこで売ってるんだろうとアオ様が持っているパンフレットを見つめる。私の視線の先に気づいたのか、アオ様は一度は折り畳んだパンフレットをまた広げてくれた。そこに描いてある全体マップを目で追いながら話を続ける。 「アオ様は兄弟いる?」 「……姉がいるけど」 「そうなんだ。良いな、皆、兄弟がいて。私、一人っ子だから羨ましい」 「……そこまで良いものでもないわよ」 「ヒナもユイも同じようなこと言うんだよねー」  三人の共通点はお兄さんかお姉さんがいて、自分達は弟や妹だということだ。仲の良し悪しに関係なく、下から見ればそんなものなのかもしれない。……なんて、知ったかぶりをしてみても、所詮、私は一人っ子だ。兄弟がいる感覚なんか分かりやしない。 「アオ様のところは絶対、美人姉妹でしょ……あ、あった。一年三組だから上の階か。でもそこのカフェ気になるんだよね。アオ様、どうする? どこか行きたいところある?」  色々見て回りたいところだけれど、アオ様と一緒にいられるのは午前中だけだ。だから、アオ様の希望を優先しようと思い、尋ねた。でも、アオ様が気になっていたのは模擬店ではなかったみたいだ。 「……絵、描いてたのね」 「……うん。一応。でも、ちょっとね……」  描くには描いて会議室(美術部に割り振られたスペースだ)に展示されてるけど、見に行こうと誘う気にはなれなかった。さすがマミちゃんだねと美術部の面々には言われたし、光稀ちゃんも褒めてくれたけど、私自身は全然納得していなかった。顧問の先生は何も言わなかったけど、思うところがあるみたいで微妙そうな顔をしていた。 「……あんなつまんない絵描くくらいなら描かない方が良かった」 「間宮?」 「……実はさ、クラスのポスター描くのに力入れすぎて、自分の方おざなりになって。見に行こうって言える感じじゃないの」  アオ様が気にかけてくれるなら、もっとちゃんと描けば良かった。そんなことを思っても、今更どうにもならない。 「でも、一番良いのは会議室じゃなくてもっと目立つところにあるから、そっちは良かったら見に行く?」 「……行っても良いけど、」  代替案を出すと、アオ様は素っ気ないけど同意してくれた。
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