(6)文化祭一日目

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「でもやっぱり似てるって、年々思うよ」 「どのへんが?」 「……うわ、早っ」  私の大きすぎる独り言は、遥香さんとお兄さんの会話を思いっきり遮ってしまった。スマホから目を離すと、二人が私に注目していることに気づく。申し訳なさを覚えながら、口を開いた。 「すみません、今、朝比奈くんに連絡したら、既読ついて……。多分、来ると思います」  既読がついたのとほぼ同時に『どこ!?』とスマホにメッセージが入ってきたのだ。早すぎて気持ち悪い。『ステージ正面』『ギャラリー』と送ったら、既読はついたけど返信はなかった。でもきっとすぐに来る。文字を打っている時間も惜しいはずだからだ。 ※※※ 「遥香さん!?」  五分もしないうちにヒナは私達の前に現れた。相当急いだのか息を切らしている。 「何で……来るなら来るって言ってくれれば良かったのに」 「ちょっと寄ってみただけなの。ビックリした?」 「めっちゃビックリした……!!」  ーーあ。ヒナって、本当に遥香さんが好きなんだな。ヒナは表情豊かだけれど、幼ささえ感じるような純粋にキラキラした顔は初めて見た。 「いつから、……違う、何時まで……いや、もう終わるしな……え、兄貴も来てたの?」  何をどう訊きたいのか分からなくなっているみたいだ。言葉がごちゃ混ぜになるなかで、ヒナの意識はお兄さんに向いた。 「遥香が寄りたいって言うから」 「うん。少しくらい良いでしょって、理生引っ張ってきちゃった」  淡々としているお兄さんとは対象的に、遥香さんは上機嫌だ。多分、元々は何か別の予定があって、ここに寄ったのは"ついで"だ。それでも、ヒナはやっぱり嬉しいらしい。お兄さんを見て、少し冷静になってはいたものの、目の輝きは失われてはいなかった。 「演劇部の公演、面白かったよ。次はどうなるんだろう、次は何をするんだろうって気になって仕方なくて」 「そっか。良かった」 「次朗くんは舞台に立つことはないの?」  ソワソワしている様子のヒナは、遥香さんに尋ねられると途端に決まり悪そうな顔をした。言葉を濁そうとしている雰囲気を感じて、そうはさせないと口を挟んだ。 「それがヒナ、プロの大根役者なんですよ。去年の校内公演が衝撃で。もし機会があったら、動画撮っておきましょうか?」 「え、本当?」 「俺も見てみたいな」 「良いから……! 機会も何も二度とないから……!」  私の発言は、遥香さんやお兄さんの興味を惹いたみたいだ。ヒナが焦っている。遥香さんが笑うのにつられたのか、お兄さんも笑っている。それは傍から見たら、羨ましいくらい幸せな家族の光景だった。
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