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「もしかしてアオ様、ヒナが遥香さん好きって知らないんじゃない?」
「女王様は庶民のことなんか眼中にないってか」
「人間ならまだマシでしょ。男なんか害虫くらいにしか思ってないかもしれないよ」
「ありえる」
本当に失礼な奴らだな。ユイは一人だとわりとまともだが、マミといると悪ノリし出すから良くない。俺がユイとマミと出会った時には既に二人はセットみたいな感じだったから何も言えないが。
しかし、だ。下々の民だろうが便所のハエだろうが、女王様のお眼鏡に叶ったのだからとんでもない快挙であることには違いない。末代まで語り継がせたいし遥香さんにも自慢したい。学校一の美人(と言っても過言ではないし多少は盛らせてほしい)に告白されたんだって。遥香さんはなんて言うだろう。「すごいね、次朗くん、やっぱりモテるんだね」が関の山か。
「今、遥香さんのこと考えてたでしょ」
想像の中でも遥香さんはつれなくて、少し切なくなっていると、マミと目が合った。ハッと我に返るが冷静を装うよりも先に、ズバリと言い当てられてしまった。エスパーか、こいつ。
「分かりやすすぎ。どうせこのことを遥香さんに話して気を惹きたいとかそんなとこでしょ」
ぐうの音も出ない。マミ自身はさほど興味もないのか桜色のポニーテールの毛先をクルクルと指に巻きつけている。そして「あ、枝毛」と髪の毛の一本を引きちぎっていた。ガサツだ。……そういえば、アオ様は綺麗な黒髪のロングヘアーだった。ちなみに遥香さんは栗色ウェーブのロングヘアーだ。
「結局どうするんだよ。断るんだろ?」
「ああ、そう、だけど……」
改めてお断りするというのもハードルが高い気がするが、それもこれもその場で片をつけなかった自分の所為だ。
「せめて格好良く振りたい……」
「どこで格好つけてるのよ」
マミの指摘も尤もだが、既に俺の脳内ではシミュレーションが始まっていた。うんうんと唸り出した俺を放置することにしたのか「ねえ、ユイ。今日の放課後さ、」とマミはユイに話しかけている。ユイも俺を無視することにしたらしく「ああ、別に良いけど」とマミの話に乗っていた。
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