ありがとう。

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 それから、十年後。  生まれたばかりの子猫の姿だった俺は、不覚にもカラスに追われ、池に落ちるという大失態を犯した。  まあ、メイの無意識の魔力の発動によって、事なきを得た―とは言えないが。  何しろ、俺を溺死寸前の状態から救ったはいいが、精神を入れ替えると言う離れ業をやってのけたのだから、『大魔法使いセドリック』の杞憂は正しかったのだろう。  「うーん、私の使い魔か…名前、どうしよう…」  あの日のセドリックと同じように、メイは俺を撫でながら呟いた。  「タマ…じゃ平凡だなあ。ポチ、じゃあ犬だし。白いからシロ?うーん、ホワイト?…」  もう少し、しゃれた名前にしてくれるとありがたいのだが、そう言えばセドリックも名前を付けるのに苦労をしていたあたり、よく似ている。  「うーん、ソロモン…ソロモンはどう?」  「にゃあ。」  まあ、いいだろう。  その名で、妥協してやろう。  『ありがとう、フォレスト。』  懐かしい声がふわりと耳元で聞こえて、そして消えた。  
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