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 「なあ、私はもう、長くはない。わかっているだろう?」  セドリックはまた駆け出した孫を見つめたまま、俺の背を撫でながら言った。  「まあ、魔法族は人間よりも少々寿命が長いだけで、死はあるからな。」  俺は言った。  「150年も生きるのは、少々長いとは言わないな。」  小さく笑う。  「今すぐ、と言うわけではないが、おそらく、あと5,6年と言ったところだろう。」  「それは…先見か?」  セドリックは今度こそ、頷いて言った。  「ああ。今朝がた、夢で見たよ。」  強大な魔力を持つと言うことも、難儀なことだと思う。  「メイは明るくて太陽みたいな子だろう?」  「少々、落ち着きがないがな。」  「子どもなんて皆、そんなもんだろう?」  「俺を力任せに抱きしめるのは、やめてほしいがな。」  そう言うと、セドリックは小さく笑った。  そして、俺の背を撫でていた手をぴたりと止めた。  「…頼みがあるんだ。」  
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