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日当たりのいい縁側に腰かけ、彼は庭先を見つめていた。
穏やかな優しい目の先には、ひらひらと舞う蝶を追いかける幼い子どもがいた。
「あっ!」
綺麗に刈り込まれた芝生に足を取られ、かの子どもが躓いた。
彼はすかさず小さく口の中で唱えると、子どもはふわりと柔らかな芝生の上に膝をついた。
「随分と甘やかすのだな。」
彼の膝の上で俺は呟いた。
「グランパというものは、そういうものだろう?」
彼は目を細めて笑った。
「転ぶことを知らねば、その痛みも分からぬだろう?」
「私の目の届かないところで、たくさん転んでいるよ。膝も肘も傷だらけの絆創膏だらけだ。」
「子どもとは、そういうものではないのか?」
「だから、私の目の届くところでは、これでいいのだよ。」
そう言って彼は俺の背を撫でる。
「それでなくとも、メイはやがて困難な道を行くことになる。今くらいは甘やかしていいであろう?」
「…先見か?」
老いたとはいえ、『大魔法使い』と呼ばれた彼である。
幼い孫の行く末を、その力で見たのかもしれぬ。
「いや、考えればわかるだろう?」
「…」
俺は返す言葉もなかった。
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