不器用な理髪師 藤子不二雄A ブラックユーモア短編集1 収録

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この店、三世代で経営してる床屋。昔は私の髪をいじってくれた爺さんも今やシャンプーと最後の仕上げのみ、時の流れはなんとやら。大将がカット、奥さんがシェービング、爺さんがシャンプー、仕上げの分業制。 シェービング開始、今日はなんかカミソリ震えてるな、角度もいつもと違う…… 皮膚ごと削る勢いでグイグイと刃通しやがる。ジョジョ三部のアヌビス神? シェービング終了、顔拭きのタオルを渡してきたのは息子。 「お疲れ様です」 「どうも」 いつの間にか大将が後ろに立っており、私の顔をチェック。 「実は、今日初めての顔剃りなんですよ…… 息子」と大将。普通の店なら不安にさせないために黙ってるところなんでしょうが、常連の私なので言った感じでしょうか。 「はぁ……」 「理容師の資格とって、練習用のカミソリじゃなくて、本物のカミソリでお客さんの顔を剃るのが初めてで」 客一号ってか…… ん? ガチの新人さんに喉元に刃突きつけさせてたってことか。どんなお偉方でも床屋と医者では無防備になるとはよく言ったものだわ。ザ・ロックで散髪を電気カミソリでやってるシーンがあったなぁ…… 今ならその気持ちわかる。 ただ、笑ゥの「切る」読んだ後だったので、不安になったけど、杞憂だったって退屈な話。 実は藤子不二雄A先生の床屋ネタはもう一つあるんです…… 読んだ作品がもう一個の方だったら、慌てて「カットのみ」って言ってたかもしれないw 前フリが長かったけど、もう一つの「床屋ネタ」のご紹介の方を。 タイトルは「不器用な理髪師」この時点で床屋やめろと言いたくなるタイトル。 ちょっとしたあらすじ。 駅前を歩くセールスマンの男があった。彼は営業の外回りに出ていたのだが、髭を剃り忘れ無精髭を蓄えてしまっていた。営業は身だしなみが第一、これでは営業先に顔を出せない。そこで、駅の裏通りにあった床屋に行くことに。 床屋の中には若い店員が一人、その店員、椅子に座り鏡の前に足を乗せて暇そうな様子。 この時点でヤベー店だと読者が思うには十分すぎる。店員、慌てて奥から店長を呼びつける。 このセールスマン、普段は銀座の一万円理容のユーザーなのだが…… 今回は急を要したためにこんな駅外れの店を利用したとのこと。髭を剃れなかったのも「徹夜麻雀明け」で暇がなかったそうな。徹夜麻雀明けで営業に出るってことですよね…… これ、いいのだろうか。 一万円理容って、都内の家賃高い場所いくとゴロゴロあるんですね。
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