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アポロの歌 全2巻(1巻の場合もあり)
手塚治虫三大性教育漫画のうちの一つ。三作ある中でこれが一番ハード。
開幕から擬人化された五億の精子が女王を模した卵子に向かう「はたらく細胞BLACKの勃起 射精 虚無」であるべきだった話が展開されるぶっ飛び具合。精子が五億あって、生き残り、卵子と巡り合えるのは唯一つのみ(双子、三つ子とか屁理屈は言わないで下さい)
こう考えると、我々は生まれる前から五億分の一の戦いを勝ち抜いたエリートに思えてくるから不思議。
しかし、年々減ってますね。この時代は五億、平成に入ると三億、最近ネットニュースでみた数は一億を切ったとか。人類がヤバい。
精子と卵子の話はあくまで「男と女が交わることで子供が生まれる」って説明、それを蔑ろにした主人公、近石照吾の未来永劫終わらぬ罰の叙事詩、それがこの作品アポロの歌である。
ちょっとしたあらすじ。照吾の母親は阿婆擦れ女、幾度となく男をとっかえひっかえで、照吾の父親は誰かわからない始末。母親にとって照吾は新しい男を作る上で邪魔者に過ぎない「いらない子」であった。そんなある日、照吾は母親が父親の内の一人と性交している現場を目撃してしまう。母親は激昂し照吾を虐待、照吾は「なぜ自分を生んだのか」と尋ねると「ヤると出来ちまうんだよ!」と逆ギレ。この体験が深いトラウマとなった照吾は「愛」を憎み「男女の交わり」や「交尾」をするのを見て憎悪を掻き立てられるようになってしまった。愛し合う動物の姿を見るだけで衝動的に殺すようになり、終には精神病院で治療を受けることになる。
女神の怒りを買った照吾は何度も女性と出会い、愛する度にどちらかが死に、死によって引き裂かれる無限ループの裁きを受けることになってしまう…… その裁き「夢」という形にはなっているけど、異世界転移(転生?)に近い。死ねばまた別の報われない愛を体験しての繰り返し。
女神の外見が「アテナ・ヴァルヴァキウ」なのよね。わかりやすい例で言うなら聖闘士星矢で度々描かれるアテナ像。アテナと明言されてないけど、間違いなくアテナ。
愛を蔑ろにしたらアテナに罰を受けるのか……
ここで愛の女神アフロディーテじゃなくアテナに裁かせるところ手塚先生のセンスが光る。愛を蔑ろにする男を愛が無い女神に裁かせる違和感に関しては気にしないことにしよう。
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