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ーー孤島、海岸ーー
「よう。降りてたんだな」
哀れんでいるような声でシェスは語りかけてくる。俺は機体の足にもたれかかり、静かに視線を向けた。そこにはセリハの姿もあったのである。
「……嗤いに来たか」
「いいや。テメェの意思を確認するために来た」
俺は意味が分からず、その真意を聞く。答えは俺の今後についてだった。俺は内心で怒りを感じたが、声にも動きにも表すことが出来ず視線を落とす。波音と夜風が奏でる中で、シェスはただ待っていた。
喪失感に溺れる俺に、道など残されていない。拳銃を取り出そうとしたが、その拳銃はセリハが持ったままだった。
「……それを寄越せ」
「駄目、です。渡したら、自分を撃つつもりですよね?」
「それ以外に何がある? 俺に、何をしろという?」
シェスは頑なに答えない。セリハも俺の問いに対して否定も肯定もせず、ただただ黙るだけだった。
「罪を重ね、独りよがりで失敗した俺に、何が」
「分かってんじゃねぇか」
不意にシェスが答える。顔を上げるとシェスは手を差し伸べていた。
「罪を重ねてきたことも、奪ってきたことも自覚してんなら、やるべきことも分かるはずだろ? 天才のクローンって言い続けたお前なら」
シェスは凜とした表情で言葉を重ねた。
「償えば良いんだよ。過去に囚われて動けないなんてことはないはずだ。必要なのは証なんだろ?」
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