エーム・ウェル

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ーーサンニア、医療施設ーー 「助かるかもしれないんですか!?」  集中治療室に運ばれたシロハに処置をしたクルナの説明に場にいる全員が歓喜した。クルナはハバンに感謝を伝えたが、同時に疑問を口にする。 「まともな治療を受けれていなかったはずなのに、免疫機能が回復しているのです。その理由が分からないのです」 「科学的な根拠、か。その答えを追求するのは無駄だと思うぞ」  ハバンは視線を外に向け、舞い散る粒子に触れてみる。すると粒子は雪のように肌に溶けた。 「原理や理屈を知ることは大切かもしれない。だが、奇跡というものは人知を超えるものだ」 「……ハバンさんが言われるとは思いませんでした。魔法は信じないのに、奇跡は信じるのですか?」 「ああ。その在り方が違うからな」  クルナはその意味を問いかける。何が違うのかと。ハバンは少しだけ笑みを浮かべて言ってのけた。 「存在するか否か。魔法は存在しない。だが、奇跡だけは存在する。それだけのことだ」
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