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新しい自分へ
引っ越しの荷物を積んだトラックを見送った。
私は翔真が迎えに来てくれている駅に向かって歩き出した。歩きながらこの3ヶ月を思い出していた。やり遂げた、だから新らしい生活に向けて何の迷いもなく歩いてるんだと…お店の皆に感謝しながら歩いていた。
駅に着くと翔真の隣に一人の男性が立っていた。
「相澤君?」
「よっ!早坂!」
「見送りに来てくれたの?」
「翔真さんに引き渡しに来ました。今日は酔っぱらってないけど…」
翔真が笑ってる。
「まだそんな事覚えてたの?」
「これ、渡しに来た。皆からの寄せ書き。古くさくねえって言ったんだけどね」
照れくさそうに相澤君が一枚の色紙を私に差し出した。
その色紙の中央に書かれていたのは…。
「目は心の鏡。貴方の心は私達を救ってくれました」
私は涙をこらえ思いっきりの笑顔で、
同期で入社してから今迄一緒に歩んで来た相澤君にお礼とけじめとの意味をこめて「ありがとうございました」と言った。
そしてこれから一緒に歩いて行く人が繋いでくれた手を、しっかりと握り返し電車に乗った。
物を売る事から時を売る。
新しい自分になる為に。
了
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