最終日

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閉店時間22時。 私は最後の副店長の机に着いた。 PCを開きパスワードを入れ、最終売上速報を見る。 最終利益が出るのは詳細な経費が出てから算出された10日後。現場がタイムリーに指標にするのはBEP(損益分岐点・売上と経費から導かれる)の金額。 心配そうに私の背後に相澤君と進藤さんが立っている。 「BEPに対し106%!黒字確定!」 三人でハイタッチをした。 「あれ?店長は?」 私は店長が席にいない事に気付き相澤君に聞いた。 「奥さんに電話してます。首が繋がったって…」 「そっか!パァっと飲みに行きたいですが、は早くに店しまっちゃうもんね」 私の返事に進藤さんが残念そうな顔をしていた。 そこに店長が何やら抱えて戻ってきた。 「本当はいけないんですが、今日は特別です。実はさっきこっそり買って冷やしておきました」 「あっ!缶ビール!」 進藤さんが喜んでいる。 明日から相澤君が副店長、進藤さんは食品マネージャーになる。実質昇格だ。 「じゃ!黒字達成と相澤君、進藤さんの昇進と、早坂さんの健闘と今後の御活躍を祈願してカンパーイ!」 「進藤さん頑張ってね、食品経験無くて大変でしょうけど相澤副店長がいれば大丈夫!」 私は進藤さんと相澤君に激励の意味を込めて言った。 「出来ればもう少し早坂さんに教えて頂きたかったですけど…」 進藤さんが少し不安気だ。 「じゃあ最後に私が色んな店をいわゆるで回って解った事を伝えるね」 「おお!早坂先生!」 相澤君が茶化している。私はちょっと偉そうに咳払いをして。 「商売の基本はを動かしを売りを儲けるです。人物金この順番を間違えたら店は崩れます。を先にした人がパワハラを起こしてます。を大切にして下さい」 「ハイ!」 何故か店長まで含めて三人が返事をした。 私の役目は終わった。もうひとつの相棒のパソコンを愛しさを込めて静かに閉じた。そしてパスワードが書かれた紙を相澤君に手渡した。 「お世話になりました」 最後の礼をして三人に見送られ店を後にした。
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