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ある日の、放課後の教室。
日直当番になった私と彼は、教室の掃き掃除をしている。
だから、私はそれとなく聞いてみたんだ。
「ねえ、高校生ってなんだか大変だよね」
「そうだねえ。
でも、学校の授業なんてどんどん難しくなるしさ、日々を進んでいくしかないよね」
彼はきちんと言葉を交わしてくれた。
落ち着きながら、でもどこか素気のないようだった。
「うーん。
ねえ、私って何か迷惑かけたかな?」
「なんでそう言う事を言うの?」
彼はしっかりこちらを見て答えてくれた。
「だって、その……。
何も感謝の言葉を言ってくれないじゃん。
消しゴム拾っても、プリント渡しても、君は返事が素気ないんだもの……」
私は彼の方を見ながら必死に声を掛けた。
だけども、顔を良く見ていると、彼の顔が少しずつ赤くなってきていた。
どういうことだろうか?
「君のこと、嫌いじゃないよ」
え?
「……嫌いじゃないけど、返事ができなくなるってことだよ。
分からないかなあ」
ごめん、分からない。
私は知らずのうちに顔を横に振っていた。
全く話の本質が分からなかったんだ。
「……気になって仕方ないんだよ。
恥ずかしくて、なにもしゃべれないんだ」
……恥ずかしいっていうこと。
私は目をぱちぱち、閉じたり開いたりしてしまった。
彼の言わんとしていることが何だか分かってきたような気がする。
これから言われる台詞に、私の顔は真っ赤に染め上げられるのだった。
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