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「ありがとう」
私は何万回かのこの台詞を口にしてコンビニを出た。
毎日登校する度に、毎日駅前のコンビニで、毎日お茶を買う。
同じことの繰り返しだ。
そこに取り立てて素晴らしさというものはないと思うんだ。
今日も、いつものように高校へと向かう。
・・・
私はよく、”きちんと感謝できる子だよね”と言われてきた。
そうだろうか?
感謝の言葉を口にするのは、当たり前のことだと思っている。
私自身、言わないと気持ち悪いし、喜ばれることをしたのだから、きちんとお返しするべきだろうと思っているだけだ。
教室に入るときに、おはようって言うのと同じようなものだと思うんだ。
ああ、そうだね。
まるで口癖のようだと言われたらそうなのかもしれない。
普段から使っている言葉だし、特に魔法のようなものではないと思う。
・・・
私を特徴づける言葉と言えば、そそっかしいということだろう。
だからよく消しゴムは落とすし、教科書を間違えたり、忘れたりは日常茶飯事だ。
隣の席に座る男の子が、よく些細なことに気づいてくれた。
誰とも話す様子を見せない彼は、休み時間はずっと席に座っていてイヤホンかマンガを読んでいた。
それでいて、周りに気を使うことができる、そんなイメージだった。
落とし物なんかはすぐに拾ってくれるし、誰かのケータイに着信があることを本人よりも先に気づいて教えてくれていた。
「教科書、持ってきてる?」
いつの日か、彼は私の方を見ながら言ってくれた。
「え?
あ、忘れて来たかも」
そうして彼に見せてもらうになったこともあったっけ。
落ち着いて周りを見ている子なんだな、これが彼に対する第一印象だった。
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