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 そのうえ、この町へ逗留する船もこの国だけを往来しているわけではない。海の向こう、はるかかなた欧州から来た船である。  顔つき、体つきがこの国に住む人々と異なる私がやってきたとして、迎え入れてくれるかどうかも、期待しがたい。  花嫁になる娘なんぞは、驚いて逃げ出すか、泣き出してしまうだろうか。  噂ではあるが、私のような顔つき、体つきの人間をこの国に住む人々、とりわけ海の外へ出たことのない人々は時折架空の生き物である「鬼」と勘違いし、逃げまどうか、もしくは総出で鬼退治という名目で殴打するという。  じゅうぶん気をつけるようにと、友人がモルトウイスキーをあおりながら、酩酊した口で言っていた。  幸いここはよく船が逗留する場所であり、人々は見慣れているようで、なかには先ほどの下足番と称した男みたいに少々ではあるが、言葉を話せるものもいるようだ。  だからといって、私が離れからわざわざ、はせ参じる理由にはなるまい。  
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