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三人目。見てますよ
私はとある家に防犯として設置された。場所はリビング。リビング以外のところは見たことがない。
右手には外に繋がっている大きな窓。奥にテレビ台とテレビ。テレビの手前には四人掛けのテーブルとイス。シンプルなリビングだ。
今日からこの家の家族は旅行に行く。だから私が設置されることになったのだ。
今は荷物の用意をしているらしく、あれはどうする、これはあったほうがと、あれこれ話ながら準備を進めている。
私の方に近寄りなにやらがさごそと音を立てて「
ここにしとくか」と言った。
家族が出て行って二日目、玄関がある方向から何やらガチャガチャと音がした。
帰ってくるには早い。それに鍵を開けるにはしてもスムーズでない。
もしかして空き巣か……?
誰もいないリビングから視界を離さず考えていると鍵音が止んだ。
玄関を入って左側に階段があり二階に続いている。
ふと左の方に人影が見えた。が、すぐにこのリビングには入って来ない。
一階より二階を先に調べる事にしたらしく階段を登る音が微かに聞こえる。
残念ながら私に足はない。空き巣であろう者がこのリビングに入って来たらバッチリその姿形を捉えてやろうと意気込む。
しばしの時間の後、ようやく空き巣はリビングへとやってきた。
その人物はぶかぶかのジャケットにパンツ、帽子を被っているが私はその人物の輪郭をはっきりと捉える。
空き巣はテレビ台の下の引き戸を開ける。残念だな、そこはハサミやカッター、糊にボンドといった物しか入っていない。
空き巣が持っている鞄は少し膨れており、リビングを一通り見回す。
私と目が合うと目をカッと見開き迫ってきた。
私に力強く触れる。と同時に私に搭載されているアラームがけたたましい音で鳴り響く。
空き巣は驚き慌てて右手の外に繋がっている窓から逃げ出した。
しばらくして私の見た映像から空き巣は特定され逮捕にいたった。空き巣が私のいる家から盗った物は金品ではなく最新ゲーム機や洋服だそうで、金目の物が見当たらなかったためオークションなど売るつもりだったと語っていた。
私はそれらの情報を家族と共にリビングにあるテレビで見たのだった。
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