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その夜も母は苦しんでいたから、父は電話で彼を呼んだ。
「俺たちは、もう死神に頼るしかないのか・・」
そう言っていた。
父のやり場のない感情は解らないでもない。
でも、そうじゃない。
彼は違う。
だって、彼が来ると母はとても安心しているもの。
夜中なのに、彼はやってきてくれた。
そして、昨日と同じように点滴治療を初めて、その間は体力低下の筋拘縮に伴う痛みを和らげるために、両上下肢のマッサージをしていた。
・・彼はいつ寝ているのだろう・・
私はそんなことを考えていた。
そうしてもらっているうちに、母はまた眠りについていた。
私の目にも、母の命は後ほんの僅かなものである事が解り始めていた。
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