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カンファレンスルームは決して広くはない空間ながらも、クリーム色の壁紙と同じ色のラウンドテーブルや椅子が配置されていて、狭いとは感じさせない工夫がされていた。
「今日はお忙しいところ、お時間を作ってくださってありがとうございます。」
と、白衣に身を包んだ主治医は穏やかに言った。
少しの間があって、
「・・病状ですが、末期状態で、抗癌剤の治療がほんの僅かに進行を遅らせている状態です。」
そう言って、テーブルの上に置いたパソコンの画像を私たちに見せてくれた。
それから、血液データも見せてくれた。
でも、それらが何を意味しているのか解らなかった。
「・・しかし、治療の甲斐なく、先の検査では、肝転移と肺転移、さらには骨転移の進行が認められております。
それに伴って、著しい体力の低下もみられています。
残念ですが、このまま治療を続けることは、残された時間をさらに削る事になります。」
主治医からその言葉を聞いたとき、父は激しく動揺していた。
「そんな!
そんな事を言うな!
あんた医者じゃないのかよ!!
妻はあんなに頑張ったんだよ!
もう助けてくれないんですか!
なんとか出来るんでしょう?
なんとかしてくださいよ!!」
勢いよく椅子から立ち上がり、テーブルに両手を付いて、顔を歪ませて、唇を震わせて主治医を睨み付ける父の目には、いつの間にか涙が溜まっていた。
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