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「さっさと出てこい」
霊斬が奏を守るように、立ち塞がって、柄に手をかけながら言った。
すると、陰から落ちぶれた武士が二人、出てきた。
「ただの餓鬼ってわけでもなさそうだな」
「隠れるのには自信があったんだがな。こんな餓鬼に気づかれちまうとは」
二人は言いながら刀を抜いて、それをちらつかせる。
「ひっ!」
奏は小さく悲鳴を上げた。
「下がって、目と耳を塞げ」
霊斬は肩越しに奏を見て言った。
奏は混乱しながらも、その通りに動いた。
霊斬は、いい奴だな、と思いながら、男達に視線を投げた。
「どっちもいい顔をしているじゃねぇか」
「捕まえて、売っちまおう」
「やれるものなら……やってみろ」
霊斬は冷ややかな笑みを浮かべて言い、男達との距離を詰めて、斬りかかった。
霊斬は一人の男の刀を弾き返し、腹をざっくりと斬り裂いた。
攻撃を喰らった右の男が叫ぼうとした。
「ぎっ……!」
だが、霊斬がすかさず、刀を突きつけて男を制す。
「なんだよ、その刀……!」
左にいた男が声を上げた。
「言っておくが、妖刀じゃねぇぞ? ただ全部が黒いだけだろうが」
霊斬は溜息を吐きながら言った。
彼が手にしている刀は、刀身が黒というだけでなく、柄や鍔、鞘に至るまですべて黒で統一されている。彼はこの刀のことを黒刀と呼んでいる。
「冷静すぎねぇか、お前」
男の言葉に、霊斬は冷たい笑みを深めた。
「人の死は、もっと幼いころから、見てきているからな。ほうら、次は貴様の番だぞ?」
霊斬は冷ややかに言い、刀を振りかざして突っ込んだ。
男の心臓を一突きした。
瞬く間に雨が、黒刀についた鮮血を流していく。
黒刀を引き抜いて、右側の男に視線を投げた。
腹を斬られた男は、痛みに呻いていたのだが、連れが骸になったことに気づいて、後ずさり始めた。
「そんな顔をするなら、俺達などに構わなければよかったんだ」
怯えた表情を見ながら、霊斬が溜息を吐いた。
切っ先を向けた霊斬は、先ほどの男と同じように、心臓を一突きした。
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