十六 戦いの終わり。

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「あ、勇夫さん、そのドローンを壊すのは、待ってください」  華夕が慌てて口をはさんだ。例によって派手に舌打ちが響く。華夕は一瞬身体を震わせたが、気丈に言葉を続けた。 「さっき、そのドローンに強制停止コマンドを打ち込んで機能停止にしてます。基地に持って帰って分析すれば色々とわかるかも知れません」  これも情報戦電子戦を主とする【トライドライ】の面目躍如であった。華夕はドローンのAIのシステムデータから、改修されたAIのシステムを予測解析し、いくつかの強制終了コマンドを生成していた。そして【トライツヴァイ】が地中に落下した際に、それを改修ドローンの機体に直接打ち込んだのである。 「全く、とんでもない子ですな、彼女は」  金富がいたく感心してつぶやいた。大榊にしても全く同感だった。この戦果で、また宮司は華夕を賛美することだろうと思い、微かに苦笑が湧いた。 「朝霞に帰投します。金富、信号弾だ」  大榊は言葉少なに指示すると、朝霞分屯基地へ進路を向けた。  【トライドライ】は分離して、【トライツヴァイ】は改修ドローンを抱えたまま大榊機に続いた。 「香川さん、私たちも……」  分離を促そうと、智美は頼造に声をかけた。しかし、頼造からの返事はなかった。 「香川さん?」  振り向いて見上げるが、頼造の姿は見えない。智美は自動操縦に切り替えるとシートの上に立ち上がって頼造のシートを確認した。  頼造はメインコンソールに突っ伏していた。全く動く様子はない。  ひっ、という音が智美の喉から漏れた。垣間見える頼造の顔色は土気色だった。ただ事でないのは明白だ。 「大榊さん……! 大榊さん! 香川さんが……!」
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