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十七 戦いがもたらしたモノ。
朝霞の分屯基地は騒然とした。十数機の敵機の分析、被弾した自軍ヘリのリペア、そして上野公園周辺における戦闘遺物の回収派遣。
そもそも光が丘地下の探索に人員を割いている宮司中隊としては八面六臂の大活躍である。
そんな中、朝霞分屯基地所属の医療部隊に搬送された香川頼造は精密検査を受けていた。
意識不明、しかし現在命の火は消えていない。看護兵が頼造の着衣を外すと、右脇腹に10㎝大のどす黒い斑紋ができていた。大量の内出血が予想される。MRIで内部の映像を撮影し、すぐに緊急開腹手術が開始された。MRI映像で大まかに原因を特定し、開腹しながら術野を眼で確認しながら行う、難易度の高い手術であった。
手術室近くの待合室で、智美は未だ呆然としていた。自分が何もできなかった事に絶望もしていた。
頼造にもしもの事があったら、それは自分のせいかも知れない。
隣に座っている勇夫の手をぎゅっと握り、自分の身体が震えるのを抑える事が、今の智美の精いっぱいだった。勇夫は複雑な表情で黙りこくっている。
「身体の中に異物……? 一体どういう事なんですか?」
状況を説明に来た看護兵に瀬里奈が食ってかかっていた。華夕も瀬里奈の傍らで、看護兵の説明を聞き漏らすまいと真剣な表情だ。
大榊や金富は山積している問題の処理のため、ここにはいなかった。一樹もここには来ていない。
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