十七 戦いがもたらしたモノ。

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 看護兵の説明を要約すると、頼造の容体はこうだ。 ・体内に異物があり、内臓を傷つけている。 ・体内に残留している遺物は1㎝大のコンクリート片と思われる。 ・内出血が激しくショック症状を起こしていたが、大量の輸血により現在は安定している。 「頼造おじさん、ずっと痛かったんですね……。私たちを助けてくれた時から、ずっと……」  華夕は、頼造が時折、微かな苦痛の表情を浮かべていたのを思い出した。あの時も、今までずっと頼造は苦痛に耐えていたのだ。  なぜ自分は気づいてあげられなかったのだろう……。  華夕が自問自答している横で、瀬里奈は看護兵に詰め寄った。 「なんで今までわからなかったんですか! 私達がこの基地に来た時、検査だってしたじゃないですか!」  瀬里奈の声に、怒りだけではなく悔しさが混じっているのを華夕は感じていた。その悔しさは、今華夕自身が感じているものと等質のものだ。 「香川さんは問診の際、苦痛などについては何もおっしゃらなかったんです。右脇腹に裂傷を負っているという申告はいただいていたので、処置はしましたけど……」  看護兵は、気の毒なくらい恐縮していた。 「自分が苦しいこととか、全然言わないから……。頼造おじさん……」 「絶対に、香川さんを助けてくださいよ。私達の命の恩人だし、みんなの命を守る為にも必要な人なんだから!」  瀬里奈の声が強く響いた時、待合室のドアが開いた。
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