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モニタの表示は、起動完了を示すものから、コマンド待ちのものへ変化していた。
この機体の現在おかれている概況が表示されており、詳細を表示させることもできるようだ。
そして、発進シークェンス。
この機体を地上に射出するプログラムが実行待ちで表示されていた。
俺は何よりも先に、この機体の詳細を表示させた。現況の詳細より、ここからの脱出方法より、機体自体にしか興味がなかったのだ。
T3-1。それがこの機体の名称だった。名称からではその性能、用途はわからない。
Bならbomber(爆撃機)、Fならfighter(戦闘機)。
Tならさしづめtrial(試作機)と言ったところか。
ここにあった六機は、全てこの「Tシリーズ」の機体だったようだ。
詳細なスペックを確認しようとした時、格納庫の扉が開き、三人の声が入ってくるのがわかった。
俺はすぐに発進シークェンスを起動させた。カタパルトが起動し、進路上の隔壁が開く。
強烈なGを予期して思わず体を硬ばらせるが、意外なまでに加速の衝撃は感じなかった。
地下40メートルからの射出は一瞬だった。
星空が天を覆っていた。こんなに星が輝いているのを見たことはなかった。月並みな表現だが「降るような星空」が実感だ。
足元を見ると、床面のモニタが地上の様子を映していた。
星空が映えるわけだった。
地上には灯りが一つもない。眼下には、廃墟となった市街地が広がっていた。
俺は真島一樹、19歳。いや、世界が廃墟と化した今では、名前や年齢に意味はないだろう。
そう、俺は「真島一樹だったもの」だ。
それ以上でもそれ以下でもない存在。
それが、俺の全てだった。
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