三 地獄からの脱出。

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 その通路はそれまでとは違い、全く破壊の跡が残っていなかった。よほど堅牢に作られていたのだろう。  俺達は明るくきれいで整然とした通路を、場違いに汚れた格好で歩いていた。  人の気配はなく、それは俺達にとって不安要素ではあった。しかし、だからこそ、悪い方向には考えず、俺達はペースを上げて歩いていた。 「ここ、すごく頑丈に作られているんだね」  倉科が通路を見回しながら言った。  壁にヒビ一つ入っていないだけではなく、天井にある照明もすべて生きている。さっきまでいた場所の破壊ぶりと比べて異様さすら感じる。 「そうだね……。シェルターか何か、かな。多分ここの電源も、自家発電なんだと思う」 「何があるのかな……。この先に……」  倉科は疑問と言うより、むしろ不安の表情を浮かべていた。少しおびえてもいるようだ。情報が全くない不安。自分達がどんな状況に置かれているのかさえ知る術もないもどかしさが、その声ににじんでいた。 「これだけしっかり守られているんだ。何か重要な物が保管してあるか、重要な設備があるか、じゃないかな」 「重要な……?」  倉科が鸚鵡返しにそう聞いた。俺達は通路の突き当たり、大きなドアの前に来ていた。 「そう。例えば……非常口とか」  俺がドアの前に立つと、ドアは左右に開いていき、広いスペースが目の前に広がった。  重要な物。重要な設備。  俺達を待ち受けていたのは、その両方だった。 「速水くん、これ……なんなの……?」  格納庫だろうか。スペースの中央部に、見た事もない形状の機体が六機、並んでいた。 「車……? いや、なんだ、これ……」  近づいてみると、明らかに乗用車のサイズではない。前部にハッチらしきものがあり、人が乗ることを意図して作られているように見える。  俺は興味を持って、三機ずつ二列に並んでいる、前列一番左の一機に近づいた。 「人が乗れるみたいだな……ちょっと見てみる」 「あ、危なくない……?」  倉科が小走りに追いかけてくる。 「でも、調べてみなきゃ何もわかんないし……」  ハッチらしきものの付近にあるパネルを触ると、音もなくハッチが開いた。中はワンシートのコクピットになっている。ちょうどゲーセンにある、乗り込むタイプの筐体にそっくりだ。  俺は早速中に入り、シートに座った。シートベルトを締めると、機体に火が入る。  倉科がハッチからのぞき込んで来た。 「は、速水くん……大丈夫……?」 「うん、大丈夫みたい。っていうか……俺はまだ何も操作してないんだけどな……」  シートベルトを締めただけで計器が次々と起動していき、目の前のメインコンソールにも火が入った。
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