推しメン。

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あれから何年たっただろう…俺は社会人になっていて都内で公務員として働いていた。すでにりなちゅんはぷてミニことfleursを卒業してfleursは後輩メンバーだけになっていた。まぁ、それでも俺はfleursが好きだけど。りなちゅんは今は大学院で大好きな美術の研究をしており、タレントとして芸能活動をしている。20代後半になったりなちゅんは、アイドル時代の可愛らしい感じとは反対に大人っぽくてきれいで賢そうな女性へと成長していた。俺は時々考える。なんで今まで夢中になれるものが見つからなかった俺がぷてミニとりなちゅんにはまったのかと。りなちゅんはどんな状況でもアイドルでい続けた。きっとそれには本人の努力と一生懸命さが必要なのだと思う。一生懸命という気持ちがわからなかった俺にりなちゅんとぷてミニが一生懸命になることを教えてくれたような気がするのだ。きっとそれが理由だ。 「由比さーん!窓口にお客さんきてるよー」 そのとき勤務中だった俺はその声を聞いてすぐに窓口へ行った。 「お待たせしました。どうされました?」 窓口には帽子をかぶった女の人が立っていた。 「あの、パスポートを発行したいんですけど…」 女の人はそう言った。 「そうですか。そうなりますといくつか書類が必要になるんですよ。案内の紙と書類を持ってくるので少しお待ちください」 俺はそう言って案内の紙と必要書類を取りに行った。 (待てよ…今の声…それに今の人…) 俺は書類を取りながらふと思った。 「あの、こちらです」 俺は案内と必要書類を女の人に手渡した。俺はパスポート申請に関する説明を女の人にしながらやはり目の前にいる女が頭に引っかかっていた。そして説明が終わると女の人は渡された書類を持ってそのまま立ち去ろうとした。 「あの、待ってください!」 気づいたら俺の口からそんな言葉が飛び出ていた。女の人は振り返って俺を見た。 「あ、あなたもしかして宮野莉奈さんですか?ぷてミニに昔いた…」 そう、あまりにも自然に現れたため最初はわからなかったが、確かにその女の人はりなちゅんだった。 「はい。そうですけど…」 りなちゅんはそう答えた。 「俺、ずっとりなちゅんのファンでした!卒業してからもずっとあなたが好きで…」 俺はそう言った。でも、さすがに本人を目の前に、しかも私生活の姿を目にしているため俺は照れて目をそらしながら話した。 「…そっか。ありがとう。ずっとファンでいてくれて…」 大人になっていたりなちゅんはアイドル時代と変わらない完璧な笑顔で俺にそう言った。そして彼女はそのまま立ち去った。俺は彼女の後ろ姿を見えなくなるまで見つめていた。十代や二十代の青春をアイドルとして過ごした彼女…人気があったときもそうじゃなかったときもアイドルとして完璧であり続けた彼女…人生の早い段階で様々なことを経験したその背中はこれからの人生を生きていこうとする俺に何かを教えてくれるような気がした。
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