推しメン。

3/9

3人が本棚に入れています
本棚に追加
/9ページ
「ぷてぃミニョン?」 次の日、俺は司の家に行って、ぷてミニのこと、そしてりなちゅんのことを話した。 「そりゃあ知ってるよ。あの子達の事務所は多くの有名アイドルを生み出した事務所だし、それに昨日のレコード大賞に出てたし。」 司は知っていて当然だとばかりに言った。 「女に振られて、今度はアイドルか。やめとけよ。良樹、女を見る目がないんだからさ。」 司は笑いながら言った。 「今度は大丈夫だ。司が言っていたように、りなちゅんを見たときビビッとくるものがあったんだ。」 「あれは恋について語っただけでアイドルについて語ったわけじゃない。それとも、アイドル相手に恋しちゃったのか〜」 司はニヤニヤして俺を見た。 「ち、ちがう!ファンになっただけだ。」 俺は慌てて言い返した。 「そんなことより、今度、アイドルショップに行かないか?ぷてミニのグッズ、すごく見たくて…」 俺は司に駆け寄って言った。 「なんで俺まで…」 司は困った顔をした。 「アイドルショップは街中にしかないし、1人で行くには勇気がいるんだ。お願い!」 俺は必死になって司にお願いした。 「しょうがないな。」 司はやれやれといった感じで承知した。こうして後日、俺と司は街中にあるアイドルショップへと行くことになった。 「…ここか」 このような専門店に来るのは初めてだったので俺はアイドルショップを目の前に入るのをためらった。 「入るのか?入らないのか?」 隣にいた司はそう聞いてきた。 「は、入るに決まってる。せっかく街まで来たんだから」 司は勇気を振り絞って店の中へ入った。そこの店は女性アイドルを取り扱っているお店でいたるところにアイドルのプロマイドやポスター、うちわなどがところせましに並んでいた。 「えっとぷてミニは…」 どうやらこの店はそれぞれのアイドルの商品があいうえお順に置かれているらしい。ぷてミニは「ぷ」だから… 「あった!」 俺たちはようやくぷてミニのグッズ売り場にたどり着いた。俺は早速りなちゅんのプロマイドを見つけた。 「あった。りなちゅんだ」 俺はりなちゅんのプロマイドを手に取った。 「たしかに宮野莉奈ってちょっと可愛いよな」 司は俺が持っていたりなちゅんの写真を覗きこんできた。 「でもなぁ、俺はぷてミニだとこの子が一番可愛いと思うけどな」 そう言って司は手元にあった他のメンバーのプロマイドを指さした。 「なんだっけ、この子…」 司は思い出そうと考え込んだそのときだった。 「高橋遥香。はーちゃんだね。」 司の隣にいた男が言った。男はメンバーの顔が描いてあるダボダボのTシャツにヨレヨレのジーパン、クシャクシャの髪に古びた丸眼鏡といった少々怪しい格好をしていた。 「君たちも、ぷてミニのファン?」 男は馴れ馴れしく話しかけてきた。 「はい。そうですけど」 俺は男に対してこう答えた。 「いいね!ちなみに誰推し?」 「え?あ、えっとりなちゅん推しです。」 「りなちゅん!いいね!確かにりなちゅんが一番無難かもしれない」 男は笑いながら言った。 「君はエースやセンターは好きにならないタイプか。そしてそんなの関係なく自分の好みを貫く。それが1番いいかもしれない。僕の勘としては、多分りなちゅんが1番生き残りそうな気がするしね」 男は急に語りだした。 「エースとかセンターって…りなちゅんは、リーダーでしょう?」 俺は言った。 「ぷてミニは、他のアイドルと違ってセンターとかいう概念はないよ。3人組だし。まぁ、大体りなちゅんが真ん中にくることが多いからりなちゅんがセンターといっても過言ではないけど。でも、1番人気は、あいりんだね。」 そう言って男は眼鏡のフレームに手を添えた。 「ちなみに僕は小松。よろしく」 男、いや小松さんは淡々と自己紹介をした。 「あの!」 突然司が小松さんに話しかけた。 「良ければぷてミニについて教えてくれません?あ、こいつこの間テレビでりなちゅんを見て一目惚れしちゃって」 司は笑いながら小松さんに言った。 「な、何言ってんだよ!司」 「あぁ、そうなんだ。わかった。教えてあげるよ」 小松さんは再び眼鏡のフレームに手を添えた。 「ぷてミニは、アイドル界の大御所事務所、『ミラクル』が生み出したアイドルの一つでぷてミニの3人は小さいときから研修生として事務所に所属し、レッスンを受けていたんだ。ぷてミニは去年デビューして今年に入ってメジャーデビューをしたんだ。そのファーストシングルが見事に日本レコード大賞最優秀新人賞を受賞した。」 小松さんは懐からメンバーが映ったプロマイドを取り出した。 「これ、僕の私物だけど、左からはーちゃんこと高橋遥香、りなちゅんこと宮野莉奈、あいりんこと花園愛梨。みんなまだ高校一年生。」 小松さんは一人一人指をさして説明した。 「まず、1番人気はあいりん。あいりんはルックス完璧。声やスタイルや性格も完璧。まさに天性のアイドルだね」 小松さんは生き生きしながら話した。 「もしかして小松さんはあいりん推しですか?」 「あぁ。まぁね。次にはーちゃんは、グループ随一のプリンセスキャラ。」 「プ、プリンセス?」 「そう、自称おとぎの国のプリンセス。いじられキャラなのが彼女の魅力だね。そして最後はリーダーのりなちゅん。りなちゅんは容姿と声の可愛さはまさに天性のアイドル。そして美術が好きな不思議ちゃんだ」 そっか…りなちゅんって美術が好きなんだ…俺はなんだかりなちゅんやぷてミニについて詳しく知れたのでとても嬉しかった。 「あ、そうだ。」 小松さんが思い付いたように話を切り出した。 「今度、ぷてミニのライブあるからチケットとってあげようか?俺、ファンクラブに入ってるからゲットしやすいし」 「え!いいんですか!」 「まぁ、そのかわりに金額はあとで徴収するけど」 そう、これが俺と小松さんの出会い。そして俺たちのオタク人生の始まりだった。
/9ページ

最初のコメントを投稿しよう!

3人が本棚に入れています
本棚に追加