推しメン。

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いつしか俺は大学受験を終え、春に進学する大学が決まったときだった。ぷてミニのホームページを見たときにホームページのトップにはこう書かれていたのだ。 「ぷてぃミニョン、改名」 その見出しを見た俺は急いで小松さんのLINEでそのことを報告した。するとすぐに小松からLINEが返ってきた。 「しってるよ。俺の友達が今日、ぷてミニのライブを見に行っててそれでメンバーが正式に改名を発表したんだって。」 すると小松さんがこのメッセージとともに動画も添付してきた。それは、公式が発表した動画でぷてミニのメンバーがライブで改名を発表している様子が動画になっていた。 「みなさん、私達から報告があります!」 りなちゅんがそう言うと会場がざわついた。 「私達、ぷてぃミニョンは約5年間活動をしてきました。5年の間も活動できたのは支えてくれたファンの皆さんのおかげだと思っています。」 りなちゅんはそう言いながら涙目になっていた。 「思えば5年の間に色々ありました。華々しいデビューをしてデビューシングルでレコード大賞を受賞して、そしたら愛梨ちゃんが辞めてしまって…愛梨ちゃんが辞めたときは正直とても悲しかった。新メンバーが入って、また新しいぷてぃミニョンになって辛いことも多かったけど、でもやっぱり楽しくて…そこで私達はある決心をしたんです。」 するとりなちゅんは凛々しい様子で顔を上げた。会場はかなりざわざわしていてえー!やだー!と最悪の事態を想定して声を上げるファンもいた。 「私達、ぷてぃミニョンは名前を変え、また新しいグループに生まれ変わりたいと思います。」 すると会場からおぉ!と喜ぶ声やえー!と残念がる声が聞こえた。 「やはりぷてぃミニョンはメンバーが入れ替わるグループで、でも2期生が入ったときはファンから不満の声が上がってしまって2期生はとても辛い思いをしていたんです。そこでもう二度と新しく入ってくるメンバーが嫌な思いをしないように私と遥香、そして愛梨ちゃんが作り上げたぷてぃミニョンはここで一旦幕を閉じて新しいグループになろうと思ったんです。」 りなちゅんはそう言った。そこで動画は終わった。  グループの名前を変えることについて俺は不満がなかった。改名することでぷてミニやりなちゅんがもう一度立ち上がってくれるならそれでよかった。  その後、グループの名前は「fleurs(フルール)」と命名された。ちなみに「fleurs」とはフランス語で花という意味らしい。そして改名と同時に新たに3期生が3人グループに加入し、ぷてミニ、いやfleursは8人体制になった。fleursはぷてミニ時代には多少の苦労もしていたがアイドルとしての経験を積んでいった結果、パフォーマンス力は確実にアップしていた。そして改名してからの初のシングルはなんとぷてミニの初期時代以来のヒットを記録した。そう、再びfleursとなったぷてミニが注目されるようになったのだ。 「やっぱ、1期生と2期生が今まで頑張っていたからだよな」 「地道な努力が実を結んだんだ」 fleursがヒットするとそういった声も上がったが、でも俺は少し違うと思った。確かに本人達の今までの努力はあったのかもしれない。でも、それよりもぷてミニからfleursに改名したこと、フレッシュな新メンバーが加入したこと、そういう環境の変化がfleursが人気を取り戻した大きな理由なのだろう。そしてそれはきっとりなちゅんが1番よくわかっているはずだ。今のりなちゅんはどんな気持ちでいるのか、とりあえず人気を取り戻せたから嬉しいのか、それともやはり複雑な気持ちでいるのか。ただのファンでしかない俺にはりなちゅんの気持ちがわからないが、俺はとりあえずりなちゅんが幸せでいますようにと心の中で願った。  ぷてミニがfleursになって1年がたって1期生であったはーちゃんこと高橋遥香の卒業が発表された。はーちゃんはとあるバンドのボーカルになるために卒業するようだが、はーちゃん推しの司はかなりショックなようだった。そしてはーちゃんの卒業コンサート。とうとう最後の時間になってりなちゅんとはーちゃんの2人がステージに出てきた。ステージに出てくるとすぐにはーちゃんが話し始めた。 「私が1番心配しているのはやっぱり莉奈です。莉奈とは研修生からの付き合いでそのときから莉奈は辛い顔を他人に見せない子でした。ぷてぃミニョンのリーダーになってもずっと笑顔で、気づけばグループのお姉さん的存在になってて…fleursになってからも忙しくて辛いこともたくさんあったはずなのに莉奈は笑ってて…なんか、本当に粘り強い子だと思います。」 はーちゃんは涙ぐんでいた。 「何それ!そんなにほめたって何もでないからね」 りなちゅんはそう言って笑った。すると会場にもどっと笑いが起こった。 「でも、だからこそ心配なの!だって莉奈はグループのリーダーでファンもいっぱいいてそれに大学で勉強もしてるし!もう、頑張ることがいっぱいあって、身体壊さないか本当に心配!」 まるで友達と普通に話すテンションではーちゃんはそう言った。 「…ありがとう」 気づけばりなちゅんの目からも涙が出ていた。 「よし!じゃあ、私達の雑談はここまでにして最後に2人で歌いたいと思います!曲は私と莉奈の思い出の曲、デビューシングルの『はちみつレモン』!」 そして2人は歌い始めた。俺がぷてミニを好きになったきっかけの曲、「はちみつレモン」を歌って…  特に好きになるものもはまるものもなかった俺はぷてミニとりなちゅんに出会った。多分俺がはまった唯一のものがぷてミニとりなちゅんだった。それと同じようにりなちゅんにとってもおそらくはまったものがアイドルだったのかもしれない。だからりなちゅんはいつも笑顔でひたむきに頑張りみんなのアイドルであり続けたのかもしれない。青春は例えばはちみつレモンみたいに甘酸っぱいとよく言われるけど、俺の青春はぷてミニとりなちゅんで、りなちゅんにとって青春はぷてミニだったんだ…そう思いながら俺は青春を象徴する曲、「はちみつレモン」を聴いた。
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