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右手は…
「今、どうしてるの?」
さくらの方を見る
さくらは微笑んで
「さっき言ったよ」
「いや、"大丈夫"って言っただけだろ
どうしてるのか…なって
具体的に」
さくらはまた
寂しそうな顔で
「一人だよ
私は今、寂しく一人でいる」
そう言って笑った
何だよその顔
「いつから?」
「君と別れた日から…1人」
そう言うと
俺から目をそらした
幸せになっていると思ってた
さくらは美人だし
清楚だし
賢いし
誰からも好かれるって思っていた
「君に酷いことをした罰があたって
ずっと1人でいるんだと思う」
酷いことをした
そう
さくらは俺に酷いことをしたんだ
長く長く
時間を掛けて…
こんなに綺麗な顔で
とてつもなく
酷いことをした
過去の恋愛話を聞かれても
話したことがなかった
思い出すことも
拒んでいた
誰かに話してしまうと
その人はきっと
「ひどい女」
とさくらを罵るだろう
罵られるべき奴
だけども
他の誰かが
さくらの事を知らない誰かが
そんなことを言うのが
嫌だったんだと思う
恨んではいたけど
嫌いになんてなれなかった
心底惚れていたから
始めて好きになった人
始めてキスをした人
始めて…
俺のすべての始めては
さくらで染まっていて
そこには誰も入れたくない
エゴイズムのようなものになっていた
さくらはこちらを見て言った
「ずっと後悔していたの
君に酷いことをした事を…
今日、会えて良かった
ごめんね
ごめんなさい」
そう言うと
大きな瞳に涙を浮かべた
止めろよ
そんな顔…
今更、"ごめんなさい"なんて
都合がよすぎる
フザケルナ
心でそう叫びながら
身体はそうはいかない
さくらの涙がこぼれた頬に
俺の右手は触れていた
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