お弁当箱

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「お帰り!お弁当箱流しに出しといてよ!」 「あぁ」 ガシャッ! 「ちょっとぉ、もっと丁寧に置いてよ!」 「っち!はいはい…出かけて来る」 「えっ!またぁ?ご飯は?」 「いらない」 バタンと玄関の扉が閉まると同じ位のタイミングで返事をし大樹は出て行った。 流しに行き「ったく!」と言いながらお弁当箱を洗っていると、知らぬ間に帰って来た娘が笑っている。 「あれ?亜子(あこ)帰ってた?」 「ただいま言ったよ?」 「あそっ、聞こえなかった」 「言わなきゃ怒るくせに、言っても聞こえなかったはないっしょ」と又笑ってる。 大樹と違い亜子はいつも穏やかな子で、兄弟でこんなにも違うのかと不思議でならない。 「それより何が可笑しいの?」 「さっき玄関先でお兄ちゃんとすれ違ったらお母さんと同じセリフ言ってたから」 「えっ?」 「『ったく!』って…似てるよね?」 「似てなーいっ!」 「そう思いたいだけでしょ?はい、お弁当箱…ご馳走様でした」 「はいよー!」 娘が素直なのがせめてもの救い。 「今日ね、友達が亜子のお弁当いつも美味しそうって言ってたよ」 「あったり前でしょ!」 「ほらっ!そう言う所がお兄ちゃんと似てるの!」 「似てなーい!」
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