名も無き花

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 何処からともなくメロディーが流れてくる。電話の着信音だ。彼がリュックからスマホを取り出す。 「もしもし、俺っす」 「片付いたか?」  相手の声が漏れ聞こえてくる。声のボリュームが尋常ではない。ドスの利いた威圧感のある声だ。 「はい、任務完了です」 「そうか、ご苦労さん。で、次の任務だが……」 「えぇ、もうっすかぁ?」 「まぁそう云うな。次は県内トップクラスの進学校、偏差値七十五の神童高校に潜入捜査してくれ」 「神高っすか。ついて行けるかな……」 「お前のIQなら余裕だ」 「こんな時期に教師を雇ってくれますかね」 「(たわ)け、生徒として潜入するんだよ!」 「えぇ! 次は高校生のコスプレですか。俺もう二十四ですよ。行けますかねぇ」 「お前の顔なら行ける。頼んだぞ!」  そう言って、電話の相手は一方的に電話を切ってしまった。
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