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私はやっとの思いでトイレから這い出し、廊下へ出ることができた。
するとそこに、私の前を通り過ぎようとする、先輩と外科医の佐々木ドクターがいた。私はすぐさま助けを求める。
「先輩、先生、助けて! 助けて下さい!」
二人は全く見向きもせずに私の前を通り過ぎる。まるで私の存在に気付いていないかのように。
「先生! 待って……先輩、お願い……」
私は必死に叫んだが、二人は振り向くこと無く去って行った。
「そんな……」
私は半べそをかき、二人の後ろ姿を見つめていると、反対側から並々ならぬ気配を感じた。
ぞわぞわと背筋が泡立つ。何かがいる。それが何なのか分からない。
恐怖で身体が硬直し動かない。自分の意思で動かせない。なのに、勝手に頭が振り向こうとする。
いやだ、見たくない!
そんな思いは無力であった。二人のほうを向いていた私の頭は、虚しくも廊下の反対側を向く。
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