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優樹は姿を消した。茜は状況が飲み込めず、ただ一人ベンチに座り途方に暮れた。
自分の何がいけなかったのか。知らず知らずのうちに、優樹にフラれるようなことをしてしまったのか。
頭の中でこれまでの思い出がフラッシュバックのように過ぎていく。ドジなことで叱られることはあっても、愛想を尽かされるほどの出来事が思い付かない。
「どうして……」
その後、携帯電話も繋がらなくなり、完全に連絡が取れなくなった。理由もなく一方的に見放された。
茜の心は、灰が舞い散る煙のように息苦しく不透明だった。
そんな煙ったモヤの中に、うっすらと炎が見え隠れし始める。火の無いところに煙は立たずとは良く言ったものだ。
炎に比例して怒りも増える。茜の中で、優樹に対し憎悪が芽生えた瞬間だった。
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