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「分かりました。行きますよ、行けばいいんでしょ……」
ホーム画面に戻っているスマホ画面に向かって、彼はぼやいている。
随分チャラい話し方だ。それに僕と云っていた自分のことを俺と云った。
「今のは、誰ですか?」
「僕の上司です。僕は、怪異事件専門の刑事なんだ。美雪さんも、看護師の仕事頑張ってね」
「どうして私の名前を……」
「名札」
青年は、自分の左胸をクイッと指し、立ち去ろうとした。
「あ、あの。お名前を……」
「ごめんっ、僕には名前が無いんだ」
そう言って、彼は次の事件に向かうべく病院を去っていった。
名も無き花/おわり
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