孤独な生徒会長

6/29
前へ
/283ページ
次へ
          *  山之上小太郎が転校してきて、一ヶ月が経ったある日のことである。彼が私に、変なことを質問してきた。 「なあ、いずな。体育の先生いるじゃん? 足の短い人」 「あぁ、三川先生がどうかした?」  確かに足、短いけど…… 「あの先生って、いつから先生やってるの」 「はぁ? 何でそんなこと知りたいのよ」 「いいから教えてよ」 「確か三十五歳からって自分で言ってたなぁ。その前はサラリーマンやってたみたい」 「何の職業?」 「何て云ったかなぁ、大きな企業の実業団で水泳選手やってた、って云ってたような……確か凄く強いチームだったけど」 「けど?」 「怪我をしてついていけなくなって辞めた、って。それで教師に転職したって云ってたかなぁ」  山之上は腕を組み、顎を軽く摘まむ。考え事をするときの彼の癖だ。良くこうしている姿を見かける。 「もう一つ教えて欲しいんだけど……化学の先生いるじゃん。メガネ博士の」 「あぁ、五十嵐先生? いるね」  黒淵眼鏡に白衣着てるから確かに博士っぽいけど……メガネ博士って。 「あの人、前からあんな(ふう)?」 「どんな(ふう)よ?」 「授業でも口数少ないし、先生の中でも浮いてるみたいだし。目が据わってて何考えているか分からないって言う(ふう)」  凄い言いようだけど、的を得てる。
/283ページ

最初のコメントを投稿しよう!

43人が本棚に入れています
本棚に追加