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山之上小太郎が転校してきて、一ヶ月が経ったある日のことである。彼が私に、変なことを質問してきた。
「なあ、いずな。体育の先生いるじゃん? 足の短い人」
「あぁ、三川先生がどうかした?」
確かに足、短いけど……
「あの先生って、いつから先生やってるの」
「はぁ? 何でそんなこと知りたいのよ」
「いいから教えてよ」
「確か三十五歳からって自分で言ってたなぁ。その前はサラリーマンやってたみたい」
「何の職業?」
「何て云ったかなぁ、大きな企業の実業団で水泳選手やってた、って云ってたような……確か凄く強いチームだったけど」
「けど?」
「怪我をしてついていけなくなって辞めた、って。それで教師に転職したって云ってたかなぁ」
山之上は腕を組み、顎を軽く摘まむ。考え事をするときの彼の癖だ。良くこうしている姿を見かける。
「もう一つ教えて欲しいんだけど……化学の先生いるじゃん。メガネ博士の」
「あぁ、五十嵐先生? いるね」
黒淵眼鏡に白衣着てるから確かに博士っぽいけど……メガネ博士って。
「あの人、前からあんな風?」
「どんな風よ?」
「授業でも口数少ないし、先生の中でも浮いてるみたいだし。目が据わってて何考えているか分からないって言う風」
凄い言いようだけど、的を得てる。
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