名も無き花

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          *  築二十二年になる古びた入院病棟で、ナースコールに呼ばれる私は、廊下をバタバタと走り回っていた。  四人部屋へと続く廊下を忙忙(せわせわ)しく移動していると、微かな薄笑いを含んだ、気味の悪い声が囁いた。 「この子がいいなぁ……この子がいいぃ……」 「そうだぁ……今度はこの子にしようぅ……」  冷たく震える小さなが、背後から聞こえた。たぶん聞こえた。  うしろを振り返り辺りを見回す。ところが誰も見当たらない。
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